小さな巨人
昨晩、久しぶりのお客様がいらっしゃいました。
小さなバーを初めて、今月で1年が経とうという今、そのお客様が以前いらした約一年前のことをよく覚えています。
セッションをしていた店内が、楽しそうだということで、お隣のお店の常連さんが来店してくださいました。お年は70代後半男性。
ピアノを弾いてみようと、少しだけフレーズを弾いた途端、その手を停めてしまわれました。その時とても悲しそうな表情をされていたのが印象的だったのです。
それから、しばらくしお顔を拝見していませんでしが、朗らかなお顔を久しぶりに見せに来てくださった昨日は、2度目のご来店。
お話をしてみたら、やはり以前はプロとしてピアノを演奏していたことや、今は全く弾けずにがっかりしたことなど、お話ししてくださいました。
音楽をベースにした私のお店のことを、よく褒めてくださいます。
そして、遊びでこの店をやっているということも、批判する訳ではなく褒めてくださいます。
私は最近、この「遊びでお店をやっている」と言うい言葉にとても抵抗があって、「お客様が喜んでもらえるように、真剣にやっているのに。。。」と、少し腹が立つ思いが見え隠れしていたのです。
そのお客様は、終始朗らかな笑顔で、私の言い訳がましい理由をよく聞いてくださいました。
利益が出るように、試行錯誤していることなど、懇々と話していると、うんうんと頷きながら、ただ聴いてくれださるのです。
単純に、「余裕が有っていいよね」といっても、取り方によっては、皮肉にしか聞こえない。
直接この言葉を、このお客様が言ったわけではありませんが、自分の心の繊細なところがうまく伝えられないと、思って少し焦っていたのですが、そのお客様は、「遊びをもっと広げて、そして成功してほしい。せっかくこの場所があるのだから、家賃を稼ぐことに留まらず、もっと頑張って!」とエールを下さいました。
私は、バーを始める前も商売をして来ましたが、お客様と直接のやりとりで商売する今の仕事にあたって、自信の無さが邪魔をして、なかなか軌道に乗っていないと思うことも多々あります。
こうしなくちゃだめだ。みたいなことを、いつも気にしてしまう。
商売が好きだと思っていましたが、それよりも「人が好き」なのかも知れない。
人が好きだということは、人から言われて気付いたことですが、この仕事になってから本当によく言われます。
自分の好きな事をもっと掘り下げて、周りの人のためにも、自分のためにも頑張っていこうと思いました。
そしてこのお客様、お酒に酔っているにもかかわらず、人を否定や批判せず、自分の言いたいことも押し付けなどせず、しっかり伝えられる。そして、ご自身の災難や逆境も本当に感謝している「凄い人」でした。まさに今を生きてらっしゃる。
笑顔が素敵なので、誰からも好かれる人柄とは思っていましが、とても偉大な人でした。
私は、周りの人に恵まれています。
私のことを、同じ町内だ!といって笑ってくださる、この小さな巨人に、深い感動を覚えました。
このタイミングで、お会い出来たのも、何か理由がありそうな気がします。
これからも笑顔に磨きをかけて、がんばります!